通勤電車運行にみる横並び症候群

他人がいい目をみるぐらいだったらは、自分が余計に不利益をこうむっても、他人に得はさせない、という考え方。

しばしば山手線などの通勤電車が「時間調整」と称して、後続の電車が遅れている場合に、駅に長く停車してわざと遅らせて運行する。確かに、そうしたほうが、大きく遅れた次の電車まで待たなくとも、少し遅れた先行電車に乗れてすこし得する人はいる。しかし、明らかに全体としては、遅れていくし、逆に本来だったら乗れるはずの乗り継ぎを逃すことだって多くなる。

 ボストンの地下鉄では、このようなときにまったく逆の方法をとる。定刻で走っている先行電車はそのまま時刻表どおりに走らせる。そして、大きく遅れた後続の電車は、突然、快速電車に変更されるのだ。乗客には、たとえば、Harvard Square から Boston 中心部に向かう地下鉄で、これからこの電車は次の3駅を通過するので、その3駅で降りたい乗客はこの電車を降りて、後続の電車を利用するようにと告げるのだ。次の電車は、乗り降りする人も少なく、ごく短い間隔でついてきているので、そのように乗り換えさせられても、時間の損失はほとんどない。遅れた電車は、数駅を無停車で通過するので遅れを取り戻せる。前の電車の利用者も影響を受けない。全体でいえば、さらに後の電車に乗換えを余儀なくされた人たちが、若干、不利益を蒙るように見えるが、実のところ、混雑した電車の乗降で余計な時間がかかることを考えると、大抵の場合、まったく損はしていない。ほとんどすべての人が得をして、ダイヤも回復するという妙手である。

 山手線だって、遅れが生じて運行間隔が不均一になったら、遅れた電車を快速にして、渋谷、新宿、池袋など主要ターミナル駅の間の駅は飛ばすようにしたらよいのだが、この合理的な運行方法日本では無理なのだろうか。